フランス、ブルゴーニュで、ボーヌ農業促進・職業訓練センター（CFPPA）の学生寮に滞在し国際ワインスクールに通っていた時期、優れたワインの作り手を訪ねる度に感じるのは彼らがその先祖たちと強い絆でつながっているということでした。
彼ら・彼女達との会話からは先祖への強い親近感と感謝の思いを頻繁に垣間見ることができます。何十年、あるいは百年を超えようかという時を隔てて先祖によって開拓された畑で育てられてきたぶどうの木を受け継いで、今日を生き、明日のワインを作っているのですから、彼らの多くが曾祖父母や、さらにその先祖のことでさえ、まるでついさっきまで会っていた親しい人のように語るのも頷けます。ヨーロッパの文化や歴史にワインを重ねあわせて考えるとき、私はこれがとても大切なことだと思うようになりました。この先祖との強い絆の意識こそが文化の芯、国の強さの源、に成りえていると感じるからです。何故ならそれこそが、先祖への、そして先祖が守ってきた土地、ひいては地域、国に対して自然に愛情を育む力の源泉となるからです。
ワインや日本酒の作り手の詳細な事情も、苦労話も、レストランでのソムリエの暗黙のルールも一切知らずに真っ新な状態でフランス料理学校の経営者として食の世界やワインと親しむようになった私は自分が、ワインやお酒の業界の専門家の方々とは異なる視点や価値基準を踏まえてワインについて語るように育ってきたと感じます。世の中の大半の方々と同じように殆ど前知識のない状態で、かつ３０台半ばにも満たないまだ感性豊かな年齢で非常に高いレベルの食やお酒・ワインに濃密に接しられるようになったことで、虚心坦懐な心での気づきや発見の日々を過ごすことができたからです。実はそういった前知識の無い、白紙の状態で本物とふれあうことこそが、多くの場合でビジネスに役立ったり、プライベートで人の心を掴んだりすることが多いという事実もやがて実感するようになりました。私のセミナーでは、そんな視点や切り口で私自身が驚き・感動とともに体験してきたエピソードも盛り込んで皆さんとお話していきたいと思います。
「美味しいワインやお酒を、そこから文化や歴史にまで拡がるユニークなエピソードを肴に楽しみたい！」
そんなみなさんとの出逢いを楽しみにしています。

酒と文化のサロン　室長　菊池Tan貢利